牙龍−元姫−
「―――――あ、」
背を向けて委員長の元へ行こうとしたけど、
ふと何かを思い出したように声を出した空が気になり振り返る。
躊躇いがちに空は尋ねてきた。
「蒼衣と庵、知らねえ?」
「蒼は遼と何処かに行ったよ?庵は知らないけど」
「遼太は一人で居るぜ?多分庵は蒼衣と居るし」
「―――あれ?なら三人は一緒に居たの?」
遼と蒼衣は庵のところへ行き、後にバラけたって事?
不自然な点が多いのが気にかかる。
態々三人だけ?戒吏と空は?
「何かあったの?」
「…いや、」
わざわざ蒼と庵を探すくらいだから少し心配になった。空は言葉を濁し曖昧に答える。
「遼が苛ついて一人離れて行ったみたいだから、」
「―――イラついてた?遼が?」
「あ〜大丈夫だって!どうせ小もねえ理由だから。響子が気にする迄もねえよ」
不思議がる私に言葉を濁しながらもいつもの笑顔で笑ってくれた。
私の頭を撫でてくれる空に気持ちが和らぐ。
そして不穏な様子が漂う三人に何もなければいいと思った。