牙龍−元姫−



ガラスの中に入った両生類をもう一つのガラスへ移すという何とも馬鹿げた競技。



ガラスからガラスへ移すタイムが早ければ早いほど点数が加算される。



教師が考えた、何とも下らない“お遊び”



なら自分達でやってみろと抗議したい。生徒を嘗めてるとしか考えられない。



だけど私は侮(あなど)っていた。



この競技、
神無際にしてはまだ極めて楽だと思ったから。



ナゼなら、
哺乳類だと思っていたから。



危険な物には出たくない。だけど哺乳類なら大丈夫だよね?という考えに至った。



きっとこれに出ている女の子も私と同じ考えの筈。
そして見事教師の術中に陥ってしまった。



可愛らしい哺乳類なんて、そんな生易しいわけがない。



何を触るかは籤(クジ)引きで決めたけど、私は不運すぎる蛙を引いてしまった。



昆虫類じゃないだけマシだけど蛙は酷すぎる。





「無理だよ…っ」





本能的に目に涙が溜まる。ガラス自体拒絶してしまう。周りの子もこんな感じ。蛇・蜥蜴(トカゲ)・イモリ等。蛙と同等並の嫌な爬虫類・両生類達が勢揃い。





「野々宮さん大丈夫!」





クラスから二人出場する決まり。パートナーの委員長は笑いながら親指をグッと立てた。
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