牙龍−元姫−
ゲコッ
「……き、きゃあああ!」
気持ち悪い!
気持ち悪い蛙の鳴き声を皮切りに有りっ丈の声で叫んだ。
あまりに至近距離で見た蛙に昇天しそうだった。
委員長は直ぐさま私から蛙を引き離して声を掛けてくる。
あっ、と腰が砕ける。
恐怖のあまり足の力が緩みその場に崩れ落ちた。
「そ、総長ぉーっ!落ち着いて下さい!」
「き、響子さんなら大丈夫ですから!」
「相手はただの蛙っすよ!」
パイプ椅子や長椅子が並ぶテント辺りから叫び声が轟く。
端でパイプ椅子が吹き飛んだようにも見えた。
総長なんて一人しか居ない。戒吏が暴れているのが手に取るように分かる。
本当、意外と手の掛かる戒吏。
蛙に怯える私のため…?
なら一層このままこの設備を全て破壊してほしい、なんて、
蛙に触りたくないがために私らしくない事を頭の片隅で考えた。
地面に手をつき項垂れる私の耳に聞こえる足音。
「(……誰?)」
目を向けると中年の教師が顔面蒼白で、
ピストルを持った若い教師に何かを耳打ちしていた。