牙龍−元姫−



ピストルを持った教師は何かを聞くと、慌てて振り返った。



私もその教師と同じように視線の先を見れば、
鋭い目付きで教師を威嚇する戒吏がいた。



戒吏の右腕には平良君。



腰や左腕、脚には他の牙龍の人がへばりついていた。



ただ仁王立ちして遠くから睨まれているだけなのにピストルを持つ教師は震え上がる。





「ひっ!寿君有り得ないくらいにキレてる!」





委員長も威嚇する戒吏を見てしまい悲鳴を上げて私の後ろに隠れた。


委員長は虫より戒吏が怖いんだ…と場違いな事を思った。
絶対に蛙の方が百倍怖いと考える私はきっと少数派。



教師はぷるぷる震える指先でピストルの引き金を引いた。





「え?」





なに?何で銃声?だってまだ蛙を移していないのに…と不思議がる私の耳に届くアナウンス。



【エ、エー組1位抜ケデス。エー組ニ点ガ加点サレマシタ…】



突然のアナウンス。前の放送より幾分か短い言葉。それにどうして片言なんだろう?と小首を傾ける。


委員長も訳が分からないと言った様子で教師に聞く。



教師は冷や汗をダラダラと流しながら引き攣った笑みで答えた。





「の、野口(ノグチ)が野々宮の変わりに、カ、蛙をガラスの中に入れただろ?だ、だから競技終了だ!お、同じクラスなんだから誰がガラスに蛙を入れたって良いだろ?ハ、ハハハ!」





教師は吃りながら早口で話すと、引き攣った笑みを残し逃げるように去っていった。
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