牙龍−元姫−
しかしお礼を伝えてから一向に返事が返ってこない。心無しか固まっているように感じる。
「…橘さん?」
そんなに私がお礼を言うのが可笑しかったのかな?と思った。私は然程性格は悪くないのに。私は不安になりながらも恐る恐る橘さんの顔を伺う。
「―――――」
「え?」
「ぎゃああああああ!桃子ちゃんフェイス炸裂ううう!可愛い可愛い可愛い可愛い!ああっ、橘寿々はダメージをうけ瀕死寸前ですありまする。応答お願い致します。こちらタチバーナ、タチバーナ」
聞き取れなかったため、聞き直そうとしたら――――――いきなり叫び出した橘さん。そこからは壊れたように一人で語り狂う。
私は余りに想像していた女の子と違う事に引き攣った笑みを浮かべていたに違いない。健気な女の子像がガラガラと崩れていった。
「―――――――今度は寿々を騙すのかよ」
ふと、彼が話し出す。
私はゆっくり声が聞こえた彼の方を見る。相変わらず憎悪の目を向けてくる――――――だけど何処か切なげ。
「桃子?ハッ、偽名まで使ってご苦労なこった」
空は私に向かって嘲笑う。
その目は私を憎いと思う一心な瞳。でもやはり切なく辛そうな瞳。そんな目をしている事に自分でも気づいているんだろうか?――――――きっと気づいてないと思う。それが痛々しい。