牙龍−元姫−
ガッチリとした左腕に巻き付くように引き留める。
行く手を阻むように引っ張り、踏ん張る。
遼は足を止めるが視線は向けないため、かち合わない目。
その“距離”に胸が詰まる。
「私っ、私何かした?」
まるで、別れ話を持ち掛けた彼氏に別れたくないと足掻く彼女みたい。
目も合わせてくれない遼に必死に懇願する私は醜い。何ひとつ理解出来ない私の頭は悪すぎる。
「どうして?これ、どうしたらいいの?」
携帯を取りに行く時に遼はポケットからネックレスを取り出しベッドの上に放り投げた。
―――私に、投げたのかもしれない。
半ばパニック状態。放り投げられたネックレスを左手に持ちながら焦ったように問い掛ける。
漸く、此方に向いた目。
「捨てろ」
声も、
瞳も、
冷たすぎて息を呑む。
驚きと胸が塞がるような気持ちを抑え、突っ掛えて出にくい声を必死に出す。