牙龍−元姫−





遼太さんの瞳も、揺れた。





「響子に何したの?変な事してたら蒼が同じ事―――――それ以上の事をしてるかもね」





笑いながら言う庵さんを遼太さんは今まで以上に鋭い目で見つめた。
睨み付けられているのに平然とする庵さんは寛大すぎる。



俺なんか、脚がすくんで動けないのに。









確かに…



蒼衣さんが保健室で寝ていると言うことは庵さんから聞いていたから事実。



だけど可笑しい。蒼衣さんが保健室に居るだけで、どうしてこんなにも息苦しい雰囲気になるんだ。





「どこ行くの?」





庵さんを睨み付けることを止め、ポケットに手を入れて、再び歩き出した遼太さん。



歩き出した遼太さんと庵さんの距離は縮まり、庵さんの隣で止まる。


必然的に俺との距離も縮まり心臓が破裂しそうだ。





「アホ女のとこだ」

「寿々のところに行くの?…へえ」

「何だよ」





意味深に見つめてくる庵さんに顔を歪める。いまの庵さんの行動は遼太さんにとって火に油だ。





「響子のところには行かないんだ?」





遼太さんが向かう足は保健室とは逆方向。もし保健室へ行くなら来た道を戻らなければいけない。
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