牙龍−元姫−
「怪我はないよ、橘さんに助けられたの」
「そうだ!アタシが城から救出したの!まさに城に閉じ込められたお姫様の華麗な救出劇!」
ここぞと秤に橘さんが力説するが少し話が違う。私は城になんて居ないし。第一、ここはドーナツのお店だよ?橘さんの頭の中を覗いてみたくなった、切実に。
「てかアンタだれ?桃子ちゃんの何!?」
「は?桃子?」
呆れたような表情。
千秋は視線だけで私に解説を求めてきたけど私にもよくわからない。けど〈桃子〉は私の事みたいだよ。
「駄目だ!止めろ!イケてるメンズだからって生意気!桃子ちゃんはアタシのエンジェルなんだからああああ!マイエンジェルなんだよ!」
「君さ、頭大丈夫?」
「絶対渡すもんかあああ!」
「………ほんと何こいつ。頭大丈?」
千秋はボソッと疲れたような表情で呟く。橘さんは相変わらずぎゃあぎゃあと騒いでいる。