牙龍−元姫−
「保健室、行かないんすか?」
十字路の廊下にいた俺たち。
遼太さんが行かないなら庵さんは絶対に行くと思った。
でも庵さんの進める足の行き先は保健室には辿り着かない。
俺の疑問は募るばかりだ。
「どうして僕が行くの?響子に危ない事でもあるの?蒼が居るのに」
「どうしてって…」
いやちょっと待てよ?
ふと言われた言葉に考えさせられる。
確かに蒼衣さんが居るなら大丈夫な筈。まず、何らかの事件に巻き込まれたりはしない。故に響子に害はなく安全は保証される。
なのに…
何で蒼衣さんが保健室に居るからといって危ない事になるんだ?
響子さんの身の危険?いや、蒼衣さんは響子さんが嫌がる事はしない。それは、誰もがそう。
なのにそれを分かっていながらも庵さんは遼太さんに保健室に行くように、けしかけた。