牙龍−元姫−





「綺麗、か」





私の言葉に、蒼衣ただそれだけを呟いた。



切ないような、怒ってるような、穏やかのような…
よく分からない蒼の表情と声色。



だけど…



花を撫でる仕草だけは、優しい。



いつもつまらなさそうで意気揚々としていない蒼だけど、花には虜。


花ばかり見る蒼にどう声を掛ければいいか、分からない。



そう口を紡ぐ私に、蒼は口を開いた。





「偶々」

「え?」

「何で俺が此所にいるのか知りたいんじゃね〜の?」





まるで私の気持ちを代弁するかのように言う。
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