牙龍−元姫−
いつも退屈そうでやる気のない蒼が珍しく真剣な眼差しを私に向けてくる。
こんなにも距離は遠いのに呑み込まれそうになるのは、それほど真剣だから?
扉側に居る私、窓際に居る蒼。
然程声は大きくないのに、静かな保健室には拡声器を通しているかのように聞こえる。
―――…カチ、カチ。
止まる事のない針が、時間は止まる事を知らないと告げる。
―――…カチ、カチ。
蒼が再度花に触れる、
しかしソコに優しさは―――――――――なかった。
「俺が、響子を傷つけたら庇ってくれんの?」
ぶち
「ホント黙ってたのが奇跡にちけ〜よ。遼並に俺も大人じゃねえぜ?」
ぶち、ぶち、ぶち
「―――――俺色に染めてやりてえよ」
ぶちっ
赤が舞う。
桃が舞い。
赤紫が散り。
白が散る。