牙龍−元姫−



なにも考えず、ただボーッと歩み寄る。クーラーから流れ出す風が髪を撫でる。



素足のまま歩く私に、床がペタッペタッと反応するように音を鳴らす。



ペタッ…
ペタッ…ペタッ…
ペタッ…














――…ペタリ。





ピタッと止んだ素足が鳴らす音。



私の目の前には、



満足そうに笑みを浮かべる蒼。









「待ちくたびれた」




―――――笑みを含んだ物言いで窓際に腰掛けたまま腰を掴み、そのまま私を引き寄せた。
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