牙龍−元姫−
音に意識が向き、邪魔された蒼は不機嫌そうに窓ガラスを睨む。
叩かれた窓はカーテンが閉まっていて誰かは分からない。
「…だれ?」
淡い薄緑色のカーテンが掛かる窓を見ながら小首を傾げた。
わざわざノックするって事は私達が居る事が分かってるんだよね?普通誰も居ない部屋の窓をノックしないし…
「さ〜?悪戯じゃね〜の?」
腰を掴む手に力を加え私に顔を引き寄せようとしたが…
“コンコン”
またもや鳴る音に蒼はあり得ないくらに顔を顰めた。
彼をココまで腹立たせる人は凄い。
そう思い再度私は窓を見つめる。
気にせずには居られない保健室に響く音。
“コンコン”
あまりのしつこさに苛立った蒼は乱暴にカーテンを掴み、
シャッ!と勢いよく開けた。
…が、誰も居ない。