牙龍−元姫−



大きな弾ける音と共に上から舞い降りてくる何か――――水飛沫?



陽の光が当たる水飛沫はきらきらと光り、何とも幻想的だった。



その水の出所は1つの丸い玉。





「――…水風船?」





割れた黄色と赤色の水風船から水が弾けた。



現に水風船をもろに食らった蒼は頭から水浸し。



水も滴るいい男、なんてフォロー出来ないくらい正面から水を浴びた。



いきなり目の前で割れた水風船に蒼は呆然と固まっている。
(珍しい……)
ポタポタと滴る水に気づいてるのかいないのか唖然としている。




そんな蒼を尻目に姿を表した勇気あるヒト。










「『ふ、ふはははは!こ、この変態エロ魔神め!我は偉大なる神様からの御告げにより舞い降りた!……お、お、お前は追放だ!一刻も早く姫君から手を引き、さっ、去るがいい!』」





噛み噛みの言葉。芝居掛かったような口調で叫ぶ。



白髭に鼻眼鏡。尖り帽子に金色のキラキラしたマント。何とも協調性のない格好だ。





「『……さ、さっさと去るがいい!』」





去らない蒼衣に麻痺を切らしたのか二回目のセリフ。
声が裏返り若干震えている。恐怖からか蒼を差す指も震えている。



冷や汗がダラダラと滝のように止めどなく流れ出す。
恐いなら自ら死に急ぐような真似しなければいいのに。



よく見れば足も震えていた。その鼻眼鏡のヒトを観察していると、ふと気がつく。



あれ?あの鼻眼鏡の人って…
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