牙龍−元姫−





「……帰る?」





ゴトッ



私はMAILを見て放心状態になり携帯を落としてしまった。
その音で我に返り慌てて携帯を拾う。



か、帰る?どうやって帰るの?
帰ったら駄目なはず…



否。里桜だからきっとソコは抜かりないだろうね。








MAILを見て落胆しながらも携帯を仕舞う。



ペタ…ペタッ…
ベッドに近づくと暑さのあまり脱いでいた靴下を履きシューズを履く。



そして手に持っていた花弁をゴミ箱に捨てる。思いも一緒に。



ループする考えは考えても分からない。だから棄てた。ひらひらと落ちる花弁を虚無に感じた。



蒼は何を思って花びらを千切ったのか。



一体何を思って"真の友情"を破り裂いたのか。蒼にとって真の友情は邪魔で要らない花だった――――――――?

















遼に抱き抱えて貰いながら入った保健室を、



今度は自分の足で出ていく。



スライド式扉の取手に手を添える。


花は枯れながら散るよりも綺麗なままで散り行く方がいい。



蒼に千切られた花を見ながらそう思ったのは私の価値観だ。



――――私は醜く散るよりも綺麗なままで散りたい。
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