牙龍−元姫−





「行かなくて、いいのかい?」





先程より落ち着いた幾分、低い声。まるでさっき言っていた貴公子そのもの。



似非貴公子は歪んだ笑みでちー君を見る。



ちー君も興味無さげに白夜を見る。いつもの作ったような笑顔は無い。冷たい目。素だネー。



僕達の前で素を出すのって信用されてるから?それなら嬉しいなァ!エヘヘー!





「君のお姉さん、行ってしまったよ?」

「だから何」

「相変わらず素直じゃないね君は。そんなちー君も私は好いているけれども!」





笑う白夜にちー君は嫌そうに見つめ返した。



ちー君もこの白夜苦手なんだァ?
へー…ちー君が苦手なものあるなんて珍しい。





「お姉さん心配ではないのかい?」

「別に」

「さっきから校門ばかり見つめているじゃないか」





その言葉にちー君は白夜を睨み付けた。睨まれても白夜はただ笑うだけ。



怖い物知らずだよねェ、お互い。僕はいまの二人はどっちも苦手だなァ。怖くはないけど近寄りたくはないなァ。



夏彦が居れば直ぐさま逃げてる。アイツ逃げ足だけは早いしィ。僕は片割れとして情けなくなるよォ!
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