牙龍−元姫−





「ほ、ほんみょう…」

「桃子ってアイツから聞いたんじゃないのかよ…」




呆然と生気が抜けたように天井をあおぐ寿々。そんな寿々に疑問を感じたのか空は言う。


"桃子"と言う名をを彼女から聞いて要れば寿々は確実に『桃子ちゃんはギャルゲーの桃子ちゃんと同じ名前なんだよ!』と答える。


でも寿々は本名を知らない――――――と言うことは彼女から名前を聞いていないと言うこと。






「違う。ギャルゲーの桃子ちゃんに似てたから。そういえば本名、聞いてないや………」





ほらね。


シュンッと落ち込み、項垂れる寿々は『なまえ、なまえ』と繰り返し呟く。……怖いから。


結局。彼女は偽名も何も使っていなかった。ただの寿々の勘違いと妄想。寿々は興奮すると周りが見えなくなるからね。


空は彼女が偽名を使っていなかったのが分かると、罰が悪そうな顔をする。彼女を偽名呼ばわりして騙してると言ったから。







「…なまえ」



未だに呟く寿々。


本名を知らなかったショックがあるんだろう。繰り返して名前を思い出そうとしているみたいだけど聞いてないなら意味ないよ。
< 80 / 776 >

この作品をシェア

pagetop