牙龍−元姫−
「………わかんねーのか」
ふと、浮かれ気味の寿々に真剣な目をした戒吏が寿々を見つめる。
戒吏の言いたいことは予想出来る。寧ろ皆同じ気持ちだ。空も名前を教えた理由もこれだろう。
「へ?」
「名前聞いても分からねえのか」
再度、問う。
未だに浮かれ気味の寿々は少しピリピリした空気に勘づいてない。
「…名前?」
う〜ん、と唸り名前を繰り返す。
『野々宮響子、ののみやきょおこ』
しかし次第に繰り返していた声が小さくなるにつれ、なにか勘づいた顔つきになる―――――――――――――その表情には、驚き。
「裏切った、女の子?」
呆然と僕たちを見つめながら呟いた寿々。あり得ないと眼鏡越しの瞳が語っていた。