牙龍−元姫−





響子が裏切ったのは、牙龍への予想以上のダメージだった




「俺だってっ!俺だって響子が裏切ったなんて思いたくもねえよ!」



憎悪は愛情の裏返し何だよ?

愛情が大きいほどに、憎悪も大きい。



きっと空はいま自分が彼女の名前を自然に口に出していることに気がついていない。




「でも響子が言ったんだよ!自分が裏切ったってな!」




胸に痛い程に突き刺す。


きっとそれは俺だけじゃない。もしかしたら一番痛いのは、戒吏かもしれない。


戒吏はもともと、響子と付き合っていたから。


多分、戒吏はいまも…






「なのにそれが真実じゃねえ!?ふざけんなよ!響子が言ったから俺達は響子が裏切り者だと思ったんだよ!!」




何も、響子を想っているのは戒吏だけじゃない。


だからこそ憎しみも大きくなる。大きくなった憎しみを制御する術をしらない。よって、その押さえきれない憎しみは響子に全て向けられる。






「何も知らねえのに知った口聞くんじゃねえよ!!!」





響く、響く。

店内に、心に。



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