牙龍−元姫−
「―――痛ててっ」
私も今のは転け方は痛かったと思う。何時もなら手を貸す処。でも痛む良心を押さえ心を鬼にする。
私だってストーキング紛いなことされて黙っているほど甘ったれていない。
「どういうつもり?」
私は尻餅をついている奴の前に立つ。"誰か"はどうやら男みたいだ。しかも、神楽坂の制服。
男の大半は私に恨みを抱いている人が多い。全員とは言えないけど決して少ない人数ではない。
私はいつでも対処できるように、"誰か"とは一定の距離を置いた。目的も人相も分からない以上は危険だと思ったから。
「私を背後から襲うつもりだったの?」
「ち、違うっす!」
"誰か"は慌てて手をブンブンと振り否定した。