牙龍−元姫−
バッと立ち上がり、私にお辞儀したカン太。前に一度一度言ったことがある。
『そんな畏まらなくていいよ?私はそんな偉い人物じゃないんだから』そう言った。
しかしカン太は、
『親しき中にも礼儀ありっす』
晴れ晴れしい太陽のような笑顔で言われたことがある。その台詞のように今でも礼儀正しいカン太を見て嬉しくなった。
変わってないんだと心が安らいだのも束の間――――――私は顔を強張らせた。瞬時に緩んだ顔を厳しい顔つきに変える。
「だれ?」
「え?」
「誰に言われて探りに来たの?」
カン太はコソコソするような子じゃない。しかし、そんなカン太だからこそ私は怪しんだりしない。人間の心理をついた考え。
誰かに言われて私の後を着いてきてたんだろうか?
こんな不良っ気がないカン太でも一応は牙龍の一員。幹部の人や、先輩達に頼まれると断れない筈。