獣は禁断の果実を蝕むのか。
「何に対しての謝罪ですか?」
この、氷のように冷たく低い声。
何気ない一言もグサッと胸に突き刺さる。
「それは…昨日の会議の資料が間に合わなかったからで。」
「間に合いましたよ。安城がやり終えてくれましたから。」
アンちゃんが、やってくれたんだ。
良かった。
ホッとしたのは一瞬。
じゃあ、今日は何で呼び出されたの!?
専務の部屋で倒れるなって言いたかったのかな?
疑問が頭の中を巡っている。
「では、専務が呼んだのは…昨日の資料の失態を謝罪していないからでは?」
一言ずつ選びながら、ゆっくりと口を開いた。