獣は禁断の果実を蝕むのか。

自分でやっておきながら、それについて聞かれて呆れられて。


だったら、ハッキリとクビって言われた方がスッキリする。


「…それは、どういう意味ですか?」


少し困ったような。


眉をゆがめながら、思ってもいない問いかけに戸惑ったように見える。


「そのままです。私は無能かもしれません。専務のように仕事もできません。だけど、自分なりに精一杯やっているつもりです。それなのに…あんなこと。」


ギュッと唇をかみしめた。


昨日のガラスで切った口の中が、ほんの少しズキリと痛んだ。


「あんなこと?」


一層、困ったような表情を浮かべている。

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