獣は禁断の果実を蝕むのか。

「とぼけなくてもいいです。お弁当にガラスや生ごみ入れたの専務なんでしょ!?」


ギュッと握りしめた手は、専務の顔を叩いてしまいそうだからじゃなくて。


ここまで、バカにされているのが悔しい。


自分から辞めるって言わせるために、ここまでバカにされて。


だから、絶対に自分からは言ってやらない。


…どっちにしろ、データの確認が終わるまで辞められないし。


「ガラス?生ごみ?…オレがですか?」


そのとぼけ切った顔。


悔しすぎて涙が出そう。


でも、泣いたら笑われる。


専務のことだから


『泣けば済むと思っている無能』


くらいの言葉をその戸惑ったように見せかけた口から打ち放しそう。

< 120 / 387 >

この作品をシェア

pagetop