獣は禁断の果実を蝕むのか。

「専務しかいないじゃないですか!!あのお弁当を手配…」


ハッと、自分の言葉に戸惑った。


なのに、専務の口元が少し緩んで。


両指を絡めたほおづえの上にあごを乗せた。


「嶋元に手配するようには命じました。」


メガネの奥の真っ暗な瞳の奥が笑っている。


そうだ…


専務が手配はしない。


誰かが買ってくることはあっても、自分からは買には行かない。


すっかり忘れていた。


しかも、あかりさんに頼んだのなら。


やるよね?


言葉を失った口は、金魚のようにパクパクと言葉を探している。
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