獣は禁断の果実を蝕むのか。

「そこまで否定しなくても大丈夫です。小松はただの秘書じゃないですか?」


手を出されないって。


身の安全は保障されたような物なのに。


専務の冷たく響く声に、ズキリと小さく胸が痛んだ。


「当たり前です。」


ニッコリと笑ったのは、痛んだ胸を悟られたくないから。


だいたい、この人の足を引っ張らなきゃなんだから。


胸なんか痛めていられない。


「それと…ひとつ聞きたいのですが。」


急に神妙な面持ちになった。


「はい。」

「キャピステールの常務とは、お知り合いなのですか?」


その社名に。


頭の中が真っ白になった。

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