獣は禁断の果実を蝕むのか。

「つい…感極まっちゃって。もう、今日で最後かと思うと…」


ガマンしていたはずの涙が、一気に目から溢れ出た。


「バカ。」


そう言って差し出した右手。


「ハンカチなら大丈夫です。」


ジャケットのポケットから、自分のハンカチを取り出して、溢れた涙をぬぐった。


「違う。渡すものがあるでしょう?」


差し出した右手をオデコに当てて。


はあ…っと、もう一度、大きなため息をついた。


「あっ!?すみません。」


そうだよね。


まずはそっちだよね?


慌ててジャケットのもう一個のポケットから、部長のパソコンからコピーしたデータの入ったUSBを出した。


皆瀬さんは差し出したUSBを近くにあったノートパソコンに接続すると、中身を確認し始めた。


そして、たった数十秒。

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