獣は禁断の果実を蝕むのか。

「小松になんか任せられないわ。」

「そうかもしれないですけど…でも、皆瀬さんが社長とそういう関係になったって常務が知ったら。」


添えられた皆瀬さんの手をギュッと握りしめた。


「何言っているの?私は小松とは違って、コネってやつがあるの。」


そう言いながらジャケットのポケットから差し出された小さなヒートシール。


ヒートシールって、薬をアルミなどの薄い金属やフィルムで1錠ずつ分けて包装したものだけど。


白い錠剤らしきものが包まれている。


一体、なに?


「これって、何ですか?」

「睡眠薬。」


「睡眠薬?」

「そう、お酒に混ぜて飲ませちゃえば、ちょっとくらいじゃ起きないわ。それを使って、社長の別宅を家探しできるでしょ?」


小悪魔のように緩んだ口元。


「じゃあ、皆瀬さんは、大丈夫なんですね?」

「当たり前。それに、社長は別宅で仕事をする時があるから、本宅より可能性が高いし、女好きな社長なら、簡単に別宅くらい連れて行くわ。」


まあ…本宅には室長もいるしね。


どこかスッキリしないけど。


皆瀬さんの身が安全ならいいかな?

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