獣は禁断の果実を蝕むのか。
「分かりました。」
ゆっくりと返事をした。
「念のため。部長がダメだったら、これを専務に使うのよ?」
そう言いながらヒートシールをプチッと割ると、2錠の錠剤を私の手の中に入れた。
「専務にですか!?」
手の中に入れられた2錠のヒートシールを見て、眉をゆがめた。
「部長の手帳に何か書かれていなければ、専務しかないでしょ?」
「そうですけど…」
なんか。
心が痛むのは良心の痛み?
「部長なら色仕掛けで何とかなりそうだけど、専務は一筋縄じゃいかないだろうし。使うなら専務よ。」
「…分かりました。」
納得できないのは、とうとう、こういう日が来たからで。
なんとか自分の心に折り合いをつけなきゃ。
モヤモヤと重たく揺らぐ心の奥。
手の中に握られた錠剤が、使わなくて済むように。
心の片隅に点滅している。