獣は禁断の果実を蝕むのか。
まずは、九重部長だ。
九重部長、お酒に弱いといいけど。
それなら、飲ませるだけ飲ませて、寝てしまえばその隙を狙える。
本当に、九重部長と一夜を共になんて。
私には…とてもできない。
だけど、残された時間を考えると、もう、すぐにでも決行するしかない。
煮え切らない心のまま、向かうのは開発課。
「あの…九重部長は?」
近くの女の人に声をかけた。
「今は…席を外していて。」
辺りを見回しながら答えた。
「そうですか。」
どこかホッとしたような。
でも、期限は待ってくれない。
どうしたらいいの?
意気消沈したような顔をしながら、なんとなく入ったトイレ。
「…んっ……ちゃ…」
微かに声が聞こえる。
ピタッと足を止めて、周りを見渡した。