獣は禁断の果実を蝕むのか。

ドアは5つ。


ひとつだけ鍵がかかっている。


もしかして、誰か倒れた?


オロオロとしながら、どうしたらいいのか躊躇している私の耳に


「……こ…声…出ちゃう。」


息の上がった女の人の声。


一瞬、頭の中をイヤな予感が横切った。


眉をゆがめながら、もう一度、耳を澄ませて声を聴いてみる。


「聞こえちゃうよ?」


上がった呼吸で問いかける男の声。


「でも、皇…激しい……もう……。」


その女の人の声を聴いた瞬間、頭の中の予感が、確信に変わった。


でも、皇って…


聞いたことのない名前に、戸惑ったのは瞬刻。
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