獣は禁断の果実を蝕むのか。
「もう少しだから待ってて!!」
楽しそうに答えられても。
「待てません!!」
その怒鳴り声に、勢いよく扉を開けて出てきたのは乱れた制服を直す女の人。
顔は少し赤らんでいたけど、私の横を急いで通り過ぎながら、ムッとしながらにらんでいた。
そんなことは気にしていられない。
カツカツとヒールの音をさせながら、まだ出てこない九重部長のいる個室の前に立った。
ニュッと飛び出してきた手に腕をつかまれると、強く個室の中に引っ張られて。
「キャッ…」
小さく悲鳴を上げたのは、ビックリしたのと引きずり込まれてよろけたから。
ドンッとついた手は、さっきまで情事を楽しんでいた便座のフタの上。
人の体温がはっきりと残っている。
嫌でも頭の中には、さっきの情事の光景を想像させられる。
顔は自然と赤くなっていく。
慌てて個室から出ようと立ち上がると、ガチャッと鍵のかかる音がして。
振り向いたドアには、九重部長が腕を組みながら立っている。