獣は禁断の果実を蝕むのか。

「ど…どいてください!!」


ジッと九重部長の顔をにらみあげた。


九重部長は、ギュッと私の腕をつかみ上げ、ジッと顔を近づけた。


「沙菜ちゃん、やっぱりドSだね。」


まるで、獣が獲物を捕らえたかのような瞳の奥。


「な…なにを…言っているんですか?」


思わず声が震える。


「焦らすの好きでしょ?」


瞳の中は獣のままなのに、口元は優しく緩んでいる。


「違います!!」


グッと腕に力を入れて、九重部長の手を振り払おうとしてもピクリとも動かない。


耳元に近づいた九重部長の唇。
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