獣は禁断の果実を蝕むのか。

頭の中に横切ったのは、専務の顔だった。


なに考えているんだろう?


専務は、九重部長と同じ。


ダマさなきゃいけない相手なんだから。


「大体、専務と私は、何の関係もないじゃん?」


ポツリとつぶやいた。


「何がオレと関係ないと?」


冷たくて低いその声に、ドキッとして振り向いた。


「専務!?」

「携帯を忘れるな。」


あ…


カバンの中に、入れっぱなしだった。
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