獣は禁断の果実を蝕むのか。
「助かったよ。」
「小松さん、間違えてシュレッターにかけられるところだったわよ。」
「シュレッターですか?」
「そうよ。使用済み書類の籠の中に入っていたわよ?専務から連絡あって、急いで探したから大事には至らなかったけど…」
「そんなはずはないです。だって、まだ書類の整理もしていなくて…」
書類が届く前に、九重部長の所に行っていたんだもん。
出来るはずなんてない。
…あかりさん。
また、やってくれたんだ。
「書類の管理もできない。まして、仕事をせずに何をしていた?」
向けられた専務の視線は、凍りつくように冷たかった。
言えない。
言えるはずない。
言葉にならない。
うつむいて顔を上げられない。
どうしたらいいの?
「小松?悪かったわね。」
そう言いながら、皆瀬さんが入り口から声をかけた。