獣は禁断の果実を蝕むのか。

どこからそんな力が出たか分からない。


九重部長を押しのけると、振り向くこともなく。


一目散に部屋のドアから飛び出した。


乱れた服をスウィート専用エレベーターの中で直して。


自然と溢れる涙を何度も腕でぬぐいながら。


ギュッと唇を噛みしめた。


家に帰って、どんなに体を洗っても。


どんなに強く口の中を磨こうとしても。


九重部長の感触は消えてくれなくて。


深く体に刻み込まれたかのようで。


涙が止まらない。


その感触が気持ち悪いならこの気持ちに折り合いがつくのに。

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