獣は禁断の果実を蝕むのか。

「男なんてそんなもの。大丈夫。私がついているわ。」


もう一度、優しくアザにキスをした。


その瞬間、ゾワッと体に寒気が走った。


「あ…あの…」


動揺を隠しきれない私の顔をジッと室長は見つめた。


「そんな男、捨ててしまいなさい。大事な人を傷つけるような男なんて、いらないでしょ?」


そっと私の手を包み込むように、室長の手が重なる。


「ちょっと、行き違っただけで。本当に大丈夫ですから。」


苦笑いを浮かべるのが精一杯。


「情なんて一瞬で忘れるわ。寂しいって思うなら、私がそばにいてあげる。」


重ねられた手に力が入り始めて。


異常な何かを感じたのは、第6感。


「室長?」


戸惑って答えるしかできない。


どうやって、この場を切り抜けようって。


必死に考えているけど。


答えは全く見つからない。
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