獣は禁断の果実を蝕むのか。
体中をとめどなく走り抜ける熱い感覚。
それは、私の唇に触れた専務の唇から発されていて。
今にも唇を溶かしそうなくらい熱い専務の舌が。
どこか甘いのに。
激しく私の舌を絡ませた。
その衝撃でこぼれ落ちた一粒の涙のせいで。
次々に涙は頬を伝って、絡み付いた専務の舌と私の舌に塩辛く巻きついてくる。
甘いキスなのか。
塩辛いキスなのか。
もう分からないくらい。
絡み付いていた専務の舌は、ゆっくりと耳元を伝って、首筋に降りて行く。
その甘味な熱に呼吸が上がって。
専務の首筋から放たれる甘い香りに、意識は真っ白になりかける。
その途端、ズキッと首筋に痛みが走った。
「ひゃっ……せ…ん……痛っ……!!」
悲鳴にも似た声が、喉の奥から飛び出して、ギュッと専務の肩をつかんだ。