獣は禁断の果実を蝕むのか。

ジンジンと痛みは増すばかりなのに、専務の唇は首筋から離れない。


なのに、体の奥から広がる熱は、体の中に専務を受け入れたくなって仕方ない。


「オレの秘書は、九重部長の所有物だなんて恥さらしもいい所だ。」


離れた唇からは、上がった呼吸と共にイラだった言葉が出て来た。


ズキズキと痛む首筋から、発熱したかのようにその部分だけ熱を発している。


九重部長の痕…


その上に、まるで、マーキングを書き換えたかのように。


しっかりと専務の歯形まで残っている。


「あ…あの…」


おびえ切った子犬のように。


小さく体を震わせながら、ゆっくりとうるんだ瞳で専務の顔を見つめた。


「こんな屈辱は、初めてです。」


ムッとしながら眉をゆがめると、発熱してグッタリとした私の体に専務の手が伸びる。


私の腰を抱きながら、押し倒された床の上は、高級な絨毯が少し冷たく背中に感じる。


頬に手を当て、もう一度、深くキスをした。


イラだって冷たく向けられる視線と違って、専務の口の中は私と同じように熱を持っていた。
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