獣は禁断の果実を蝕むのか。
両手で覆うかのように、メガネを下から上に直すと
「小松は、どこまでも使えない秘書ですね?」
緩んだ口元。
メガネの奥の冷たい視線。
その言葉を意味するもは
『クビ』
以外の何ものでもないと思った。
「すみません。」
顔をうつむかせながら、床に散らばった服を取ろうと毛布のすき間から手を伸ばした。
ああ…私、莫大な借金と犯罪者ってレッテルを背負っていくんだって。
思い知らされた。