獣は禁断の果実を蝕むのか。

たった一言。


冷酷な低い声が耳の奥でこだまする。


「え!?」


意味が分からなかった。


ただ、驚くだけで。


専務の放った冷酷な低い声の意味を。


何が何だか分からないだけで。


専務の目の前からいなくなることが、最後に試すこと?


それは、事実上のクビってことでしょ?


なのに、それが試されるのと関係が結びつかない。


「これ以上、小松に何もかもをかき乱されたくはありません。」


専務は本気だ。


その冷酷なまでの低い言葉。


メガネの奥の瞳は、真っ暗な世界が広がっていて。


冗談なんかじゃないって。


誰だって分かる。

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