獣は禁断の果実を蝕むのか。

私の腕を離した専務の冷たくなった手を。


思わずギュッとつかんでしまった。


振り返った専務の顔。


その瞳の奥には、獣が外敵を威嚇するかのように、鋭いまなざし。


まるで、ガシャンと音を立てるかのように。


私の心が砕け散った気がした。


…専務の甘い香りのせいじゃない。


あの晩、何気なくされたキスが。


私の心に淡い期待を描かせていた。


…もしかしたら。
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