獣は禁断の果実を蝕むのか。

「私は…好きな相手を選べと言われるなら、専務のおそばにいたいと答えます。」


ハッキリと。


真剣な面持ちで、専務に答えた。


もう、デジウェアがどうとかじゃなくて。


私がそばにいたいって思ったから。


親愛の情だけで、最後の答えに変えた。


ダマさなきゃいけない相手なのに。


経歴も見た目も作りものだから。


自分の思いだけには正直でいたかった。


専務の顔は少しだけ驚いたかのように、歪むことのない瞳がピクリと少しだけ見開いた。


「いりま…」


専務の答えと同時だった。


「いらねぇなら、オレが貰ってくよ?」


背後から聞こえた声に、驚きながら振り返った。

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