獣は禁断の果実を蝕むのか。

そこには、壁にもたれながら腕を組んで、冷めた視線でこっちを見ている九重部長。


「い…いつから九重部長が?」


まさか、全部、見られていたわけじゃないよね?


いたたまれない緊張感が、体を覆ったはずの毛布の温かさを一気に冷たく感じさせる。


「ん?これ以上、小松に何もかもをかき乱されたくはありませんって話の辺りで、ノックしても返事がねえから、たった今入ってきた。」


その言葉にホッとしたけど、この状況は、どう説明したらいいの?


床には散らばった私の服と下着。


専務は上半身裸で、私は全裸のまま毛布にくるまっている。


それは…


完全に情事の後って分かってしまう。


急激に赤くなる顔。


思わずうつむいてしまう。


なのに九重部長は、ツカツカと私の近くまで歩いてきた。

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