獣は禁断の果実を蝕むのか。

「盗み聞きとはいい趣味とは言えませんが…大体、九重部長は、重役ではありませんよね?」


とがった言葉が、投げつけられた。


「人の趣味をとやかく言うんじゃねぇよ。つうか、いらねぇんだろ?だったら、オレが貰っても文句ねぇだろ!?」


苛立ったように眉をゆがめる。


「いくら重役に名を連ねているとは言っても、部長クラスには秘書は必要ないのではないですか?」


フッと鼻で笑った。


「それを決めんのは、梓悸じゃねぇだろう?」


クイッと私のあごを持ち上げた。


「あ…あの…」


なんて答えたらいいんだろう?


ジッと見つめる目が近づいてくるから、よけいに答えに詰まる。

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