獣は禁断の果実を蝕むのか。

さっきの情事でつけられたキスマーク。


私は脳の中まで専務の熱に侵されて、全然気づいてはいなかったけど。


首と太ももだけじゃなくて。


専務の唇が触れた部分は、ほとんどと言っていいくらい。


鎖骨も胸も。


腰のあたりにまでキスマークは付けられていた。


「かっ…返してください!!!」


奪い取るように九重部長の手から毛布を奪還すると、パッと体に巻きつけた。


なのに、九重部長の顔はニヤけたまま。


「男の嫉妬は見苦しいねぇ。パワハラかよ。」


ゆっくりと顔を専務に向けた。


「なにを…」


ただ視線をそむけただけ。


怒るとか、怒鳴るとか。


笑い飛ばすとか。


てっきり、そうなると思ったのに。


大体、嫉妬って何?


ポカンと口を開けて、2人の顔を見た。
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