獣は禁断の果実を蝕むのか。


「沙菜ちゃんから聞いたとき、まさかとは思ったけど。」

「私の話?」


「そう、梓悸とプライベートはまずないからな。」

「どういうことですか?」


「この仕事人間が、一緒に飲みに行ったってだけでピンときたぜ。」


イマイチ理解できない。


「でも、それはお詫びで。」


お弁当の件を簡単に説明をすると。


「お詫びなら、女の喜びそうな高っけ~物くれて終わり。まあ、『そうされる自分ではないですか?嫌なら、そうされないように努力でもしたらいかがですか?』って冷たくあしらうのがいつもだよ。」


フッと鼻で笑った。


九重部長の言葉に耳を疑って


「え?」


ゆっくりと見上げた専務の顔。


ずっと視線をそむけたまま。


こちらを絶対に見てくれない。


「あんな写メ1枚で、ここまでとは…」


口元を抑えながら、クスクスと笑いそうなのをこらえている。
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