獣は禁断の果実を蝕むのか。

そして、スッと毛布の中から抜いた手。


人差し指をジッと見つめ、そっと私の唇に乗せた。


「舌出して。」

「え?」


一瞬、戸惑った。


その開いた口の中に、そっと人差し指を差し込んだ。


その指を舌に絡めるかのように、優しく指を折り曲げた。


じんわりと口の中に広がった苦い味。


「梓悸の味。もう、味わえないからな。オレの味の方が、もっと美味いから覚悟しておけよ。」


不敵な笑みを浮かべながら、ジッと私の瞳の中を見つめてそらさない。


ゆっくりと口の中から抜かれた指。


私の腰に手を回すと、グッと力が入った。


「じょ…冗談はやめてください!!」


九重部長の体を押しのけようと、力いっぱい両肩を叩いた。
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