獣は禁断の果実を蝕むのか。

「冗談なんかじゃないぜ?じゃあ、沙菜ちゃんの決心がつくように、ハッキリ教えてやるよ。梓悸はね…」


分かっている。


捨てたって言いたいのが。


でも、その言葉を言ってしまったら、本当に九重部長に持って行かれそうで。


自分でも認めなきゃいけなくて。


辛くて悲しくなるから。


自分からは絶対に認めない。


言いたくなかった言葉。


それを今、九重部長の口から出て来そうになっている。


プルプルと小さく首を横に振りながら。


現実を見ないかのように、ギュッと目をつむって、顔をうつむけた。


「嫉妬してんだよ。オレに。」


その言葉に、パッと顔を上げた。

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