獣は禁断の果実を蝕むのか。
「どうして、専務が嫉妬しなきゃいけないんですか?」
ほんの少し、声のトーンが上がった。
「アイツ、性別関係なく独占欲と嫉妬の塊だから。」
ニヤッと笑いながら、チラッと専務の顔を見た。
「……専務が?」
ゆっくりと横を向くと、バツが悪そうに口元を手で覆いながら、眉をゆがめている専務の顔があった。
「知っているなら、いいかげんその手を離してくれませんか?」
メガネの奥の冷たい視線が、突き刺すように九重部長の顔を見た。
「ヤダ。いらねえって言っただろ?」
「九重部長に差し上げるとは言っていません!!」
はじめて聞いた、専務の張り上げた声。
「沙菜ちゃんに、目の前から消えろとか言っておきながら、誰の所に行こうが関係ねえだろう?」
九重部長まで声を張り上げる。